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ぬるぬる生きてます。
 
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【2011.01.09 Sunday 】 author : スポンサードリンク | - | - | - |
匣の中の娘二次創作アレンジ 『箱の外の娘』

 
 『嘘というのは、ひどく楽しい。』



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 入学式の朝。
 今日から三年、お世話になるだろうバスの中では、すでにみっしりと人で溢れていた。とはいえ、ここで一本二本と見送るのも癪な話。それにその様では閉門に間に合いそうもないであろう。
 まるで隙間無く詰め込まれたゴミ袋の中を伸ばした手を頼りに強引に掻き入っていく。
 朝の陽気と相成して、熱気の逃げ場さえないこの匣の中はまるで蒸し風呂のようである。
 ふとそこへただ一角。最後尾の横長の椅子をただ一人物静かな面持ちで座る女性が居た。
 思えば何を勘違いしたのであろう。こんな中にあって、それはさも非常識と言えた。だが、この場において朦朧とした意識の自分にはとてもとても考えの及ぶ話ではなかった。逃げるようにその少女の隣へへたり込むと深く息を吐く。一度二度。二度三度。三度と止めて右向かせれば、暗い瞳と目を逢す。
「君は、僕の横がそんなに嫌なのかい」
「まさか。そんな事は無いさ柚木さん」
 きょとん、と。呆けたような呆れたような、彼女はなんとも微妙な顔を浮かべた。
「勘違いでなければ、君とは初対面の筈だと思うが」
「たしかに初対面だね。君は僕の事を知らないだろうし。僕も君の事はそう詳しくはないよ」
 ゴホンと一つ喉払いに咳を吐く。
「ただウチの学校には大層綺麗な上級生が在籍している、と聞いていたからね」
 そう、彼女はとても綺麗な顔をしていた。
「ほう」
 目を細く、歳様に見えぬ淑女のようにはにかんだその顔には心底どきりとした。
「君は面白いな」
「そうかな」
 まるで裏のない言葉に思わず視線を逸らす。ふとそこでなんともおかしな物が目に入った。
「ところで柚木さん――――」
「加菜子でいい」
「え?」
「君には特別。下の名前で呼んでもいいよ」
 身の近い、それでいて年上の女性の名を呼ぶ覚えはあまりないが、せっかくの好意を無下にするのも浅かろう。
「それじゃあ加菜子さん。一つ尋ねてもいいかな」
「うん。なんだろうか」
 彼女はその膝の上に大きな箱をとても大切そうに抱えていた。
 それをなんだと訊ねれば、「箱だよ」と答える。
 それをなぜだと訊ねれば、「必要だからね」と答えた。
「加奈子。君の箱には何が入ってるんだ?」
 すると加奈子はかぶりを振るう。
「まだ秘密にしておくよ」
 それがなんだか悔しくて、知らず顔にでも出たのであろう。すまないねと加奈子は返した。
「ただ、これは僕の大切な物だからね。おいそれと人に見せるようなつもりはないんだ」
「じゃあ加奈子さん。いつか君が僕を心から受け入れた時がきたならば、箱の中身を見せてはくれないか」
 自分でも驚くような言葉を吐いたものだ。加奈子はそれ以上に驚いた事だろう。ところが彼女はにっこりと
笑った。
「ふふっ。それはいい。きっとそうしよう」
 そういって箱を優しく撫でた。
 あぁ、愛されている。
 なんだかひどく、その箱が羨ましくなった。

【2011.01.08 Saturday 23:22】 author : りゅうと | Novel | comments(0) | trackbacks(0) |
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